病院および診療所に働く職員のホスピタリティには、患者の心のひだに分け入るようなきめ細やかさが求められる。鋭い感性がなければつとまらないともいえる。看護師の仕事に例をとれば、検温や検査の介助、点滴管理、薬の配布などのほか、患者の病状に合った日常生活の援助も大きなウェイトを占めている。孤独な患者への慰めや患者の散歩への付き添い、各人の生きがいに対する手助けなど、その任務は尽きない。次のような経験をした婦長がいる。患者は六〇歳を過ぎた婦人であったが、もう手の施しようがない末期がんであることを自分でも知っていた。その婦人はベッドに寝たまま一日中、窓の外から見える空をじっと眺めていた。婦長はそれを見て、二階にはきれいな庭が見える病室もありますが」とやさしく言葉をかける。すると「私は空の見える四階にいたい」と答え「毎日こうして空を見ていると、雲の動きや空の色が一日中変化していて、そのエネルギーが私に力を与えてくれるような気がします」と言うのだった。婦長はさらに「でも大地の匂いやぬくもりが伝わってこないでしょう。それに四季の移り変わりもわかりにくいでしょう?」とたずねた。婦人は、「長く生きられない私には季節の動きよりも日々の移り変わりや時間によって変わる動きのほうが希望につながります」と答えるのだった。婦長は言う「人間にとって、とくに病人にとっては、希望は生きるために不可欠の要素です。健康な人のように遠い未来のことではなく、ほんの小さな身の回りのことに希望の芽を見つけて育てる手助けをすることも、私達の任務だと思うのです」と。
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